2013年1月13日日曜日

教師というもの、川上弘美のエッセイ、エレキな春


先月ロサンジェルスに行った時に
またまた何冊か買った中の1冊。

川上弘美です。

少し読みかけて、これのどこがいいのかわからない
と言うつれあい。
オトコにはわからないんでしょう。
いいの、いいの。
二人が共通して好きな作家はもちろんいるし、
彼の好みでも私は読まない、
あるいは逆もあります。
私の好みの作家、でも彼は好きじゃない、
興味がない。
そんな作家が川上弘美。

そんな彼も雑誌「考える人」の<考える料理>の
特集に登場した川上弘美のインタヴューは
えらく気に入っているのですけれど・・・。
彼女の生き方というか、ものへのこだわり、
考え方がね。

この「ゆっくりさよならをとなえる」という
少々奇妙(じゃないですか?さよならは
普通となえないでしょう・・・?)なタイトルの
エッセイ集。
読み出したら「エレキな春」というタイトルのついた
文章で、彼女が理科の教師をしていた頃の
話が載っています。

・・・今じっくり考えてみても、(教師に)向いて
いなかったことは事実である。まちがいない(自分で
断言するのもなんだが)。

私の結論から言わせてもらえば、
こういう人は本当は教師に向いていると思います。
そこまで言わないとしても、こういう教師も
必要なはずと言っておきましょうか。

彼女はある時担任をしていたクラスの女の子に
自分の心の中を見透かされたようなことを言われて
はっとします。

以下、引用です。

反省する前に、まず、すごいもんだなあ、と
感心した。人ってえらいもんだ。
若くても年がいってても、みんないろんなことが
わかるもんだなあ。ただただ感心した。
嬉しくもあった。

まず普通(私の知る範囲でですが)教師たるもの、
あまり生徒に対してすごいもんだなあなんて
思いません。
何を生意気なこと言ってるんだ、くらいが
関の山。
そしてそこがだめなところ。
年下であろうが、自分の生徒であろうが、
一人の人間。
教えられることも、感心させられることだって
あるのです。
いえそっちの方が多いくらい。
そんなことがあって、一つだけ彼女に面白い
ことが起こります。

生徒のうちの何人かが、私のひそんでいる
理科準備室(職員室は苦手だった←この気持ち、
よくわかる!私も職員室は苦手でした)に遊びに
来るようになったのだ。

その理科系の彼女たちと結局マンガの
情報交換と言うか、マンガの話、貸し借り
をするのです。

この文章のタイトル「エレキな春」は
彼女が生徒に教えてもらった、
しりあがり寿のマンガのタイトル。
カッコいいタイトル!
私は読んでいませんが。でも読んでみたいです。

・・・駄目な教師で、生徒に与えることは
ほとんどできなかった。与えてもらうばかりだった。
でもあの時知った「人ってすごい」感じは、
今も鮮やかによみがえる。

私も生徒に教わったことの方が多かった。
ヘンな言い方だけど、生徒に実社会の厳しさを
教えてもらった・・・。

採用試験に受かるための苦労ではなくて、
教師になるような人ってあまり人生や社会の
苦労もなくそこそこいい大学に入れて、出れて
教師になる場合が多く、
教壇に立って初めて現実社会を生徒から
突きつけられたりするのです。

すごいワルだったけど詩を書かせたら
すごい詩を書いた教え子のK。
以前にも書きました、
私の誕生日の翌日にセンセの誕生日、忘れてた
とケーキを買って持って来てくれたY。
手には根性焼きがいっぱいだった。

何十年たっても忘れられません・・・。



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