2014年5月10日土曜日

「明るい夜」、読後感






ロサンジェルスの日本の本屋さんで
ただ1冊買った文庫本。

セールだったのを、家人が見つけました。


新潮12月号に掲載された彼の
長編小説を初めて読んで以来、
この作家を知りたい!という思いが
つのっていました。


私が買ったものは、
単行本が出版されて、ちょうど3年後の
2008年に文庫化されて出た、
初版本です。

5年半前に出たものが売れずに
棚に残っていたわけですね。

だからセール‥‥。


今、私が一番気になる作家。

(あり得ませんが)お会い出来るものなら、
お話を聞いてみたい作家です。


「明るい夜」
シンプルでわかりやすいタイトルですが、
物語の進む時系列はわりと
複雑です。


登場人物は20代の女のコ二人と
同年代の男のコ。


最近は小説が読めなくなって来て、
主人公が自分と同世代というのも
ちょっと手が伸びないし、
かと言って、30代くらいの女子の
仕事やオトコや結婚やら、
という話も読む気は起こらない。


でもなぜかこの「明るい夜」は
主人公以外の登場人物の描写が生き生きと
語られて、
それに心がぐいぐいと引き寄せられて
読み進んでしまいました。


登場人物の話す京都弁も
懐かしいと言うか、
小説だって、その土地の言葉を話す。
住んだことはないけれど、
学生時代は時々、ぶらぶらと
出かけた京都の町。

そして京都弁と寄り添うように
物語を際立たせるのが
京都の町や、通りや山や川の名前。

京都って文章にしても、
こんなに<絵>になる場所なんですね。


有吉佐和子の小説の中の和歌山弁。

中上健次の小説の舞台で描かれる
新宮弁。


古くは五木寛之の小説、
「青春の門」の筑豊の言葉。





話は飛びますが、

昨年のNHKの朝の連続ドラマ
<あまちゃん>ブームで、
日本全国にも「地元アイドル」グループが
たくさん生まれたり、
紹介されたりしました。


その土地の言葉で名産品や観光地を
案内したりする若い女の子たちは
みんなかわいくて、明るかった。


標準語ばかりが日本語じゃない。

各々の土地にはそれぞれの<ことば>がある。

そしてそれを話すことは
恥ずかしいことでも何でもない。

その土地土地の言葉って
何と暖かみがあるのでしょう。

<にんげん>が生きて来た証を感じます。






それにしても「明るい夜」。

シンプルなタイトルの小説ですが、
例えば日本の歴史、
今の日本の過疎地の現状、
「遠い」国での戦争の実情などなど、
読み方によっては、
ずっしりと重い現実を突きつけられる
物語ではあります。
















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