と、朝日新聞<銀の街から>のコラムで、映画「ネブラスカ」評の中で、沢木耕太郎さんが書いていらっしゃった。
腰の骨を下り、大腿骨の骨も折って、人工骨を入れているわが母は、ひたすら<寝たきり>にならないようにと、わずかながらであっても、散歩をしていた。
それでも出好き、買い物好きの彼女が、今までのように、思ったように歩けない、出かけられない、ということへの葛藤と焦りはどれほどのものであっただろうか。
さすがに今は体力も落ち、出かけることは諦めて、<好奇心>より、体の方を優先せざるを得なくなって来ている。
アメリカのお年寄り、特におばあさんが、ハンドルに顔を近づけて、ゆるゆると大きな車を運転する姿を見るだびに、この国で歳は取りたくないと思ってしまう。
車が唯一の移動手段だから、老いても、運転するしかないわけだけだが、ルール無視、自分が行きたいように運転する老人が多いので、ドライヴァー自身だけではなく、そんな車がそばを走っていたら、こちらだってコワい。
その点日本は公共交通手段が整っているので、移動にあえて車を運転する必要もない。
ただ乗り換えなどでの移動の距離が長いことが多いので、足腰が丈夫でないと(たとえ杖をついてでも、腰が曲がっていても)、出かけるのも一苦労だ。
それがあるので、わが母は<遠出>を諦めたのだ。
<自由に移動する手段>これぞ<フリーダム>。
右肩の手術で6週間、右腕の固定をしていた私は、その<フリーダム>を失くしていた。
外は寒いし、別にこれといった用事があるわけでなくても、家に閉じこもっているだけの日々は、気も沈む。
少し時間がたってからは、ほんのたまだったが、バスで出かけた。家ではない他のどこかに<移動>するという<フリーダム>をしばしでも味わいたかったわけだ。
それにしてもこの映画「ネブラスカ」見てみたい。
ブルース・ダーンは1936年生まれ、77歳。
監督のアレキサンダー・ペインは1961年、ネブラスカ生まれ。2004年公開の<SIDEWAYS>の監督。
77歳の老人が主人公を演じる映画を作って、しかもそれが
高い評価を受ける。
ある意味、健全と言えるのかも知れない。
若者ばかりが主人公ではなく、<中年>も<老人>もが主人公の映画。確かに若さできらきらした主人公ではないかも知れないけれど、もしかしたら、生きて来た年数の重みが作る、重厚なドラマが作れるかも知れない。
(見てはいませんが)この「ネブラスカ」のように。
ブルース・ダーンと言えば、1978年公開の「帰郷」が懐かしい。こちらももう一度見てみたい。
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