映画が話題になっているのを インターネットのニュースで見たのを 覚えています。
4月に行ったロサンジェルスのブックオフ で家人が買った「八日目の蝉」。
まず私が読みました。
不倫、誘拐、堕胎、カルトなど 重いテーマを扱った力作です。 なかなか夢中になって読んでしまう箇所 もありました。
でも私は思い入れは出来ないまま 読み終えました。 感動もなく。
扱っているテーマもさることながら、 何と言うのか、この作家の文章にも 心惹かれないんですよね。
例えば川上弘美。
私は彼女の短編、長編をかなり読みましたが、 彼女の独特の文体が好きなのです。
家人曰く、ほんわかした書き方だけど、 川上弘美だって、 書いてる内容はドロドロだ、と。
それをあんなにオブラートに包んだみたいに 書いてもいいのか、と。
確かに中身はドロドロかも知れないけれど、 それをどう表現して読ますかが、プロの作家。
私は心地良く読めるのですが、 もちろん好みもあるでしょう。
⭐️⭐️⭐️
私は思うのですが、世の中で我々が着るもの、 使うもの、どれも誰かが<デザイン>したものです。
そして当然、デザインはそのものの個性となり、 それが使う人や着る人を惹きつけます。
車からバイク、自転車から包丁、お鍋、 洋服、おたまひとつ取っても、 そこにはまず、デザインありき。
アウトドアブランドも多々ありますが、 もちろん機能性は大切、 そして当然デザイン性も。
私はかつてアウトドアのものはダサい と言うイメージを持ち続けていて、 アウドトアブランドの洋服は一切 買ったことがありませんでした。
ところがアラスカに行って、 ガイドをしたりで、必然的にアウトドア のものを身につけることになり、 自分が「着れそうな」アウトドアブランド としてあったのがパタゴニアだったのです。
もちろん全てがいいと言うわけ ではありませんが、 それでもいまだにパタゴニアを着続けています。
ルルレモンしかり。 素材、デザイン、いいものが多いです。
翻って、本です。
文章です。作家です。
私が思うに、その作家の文体は、 洋服で言えばデザインではないかと。
かつて村上春樹が、自分にとって 一番大事なのは<文体>だと書いていた意味が、 今ならすごくわかります。
村上春樹がたどり着いた?あの独特の <翻訳文みたいな文体>、 真似のしようがないですよね。
真似をしても、それは空虚な薄べったい 文体にしかなりません。
すごい読書量があるわけでもないのに、 こんなことを言う資格などない かもしれませんが、私はきっと作家の <文体>にまず惹かれるのだと思います。
中上健次の圧倒的な文体、文章、 程よく力の抜けた中島らもの文章、 「ここではないどこか」へ誘ってくれる 村上春樹の文体、 何とも言えないまったりとした気分 にさせてくれる川上弘美の文体‥‥。
文体とそれ以前に好きかも知れない寺山修司 と(えらそうに言えるほど読んでは いないけど)太宰。
女性作家で読んだものって少ないのですが、 (角田光代、三浦しをん、 古くは山田詠美、吉本ばななとか?) 私にはこの人の文体、文章が好き、 という作家には、川上弘美以外でまだ 出会っていないのです。
<文体>はまさにその作家を形作る <デザイン>ではないでしょうか。
これは偏執的一読者としての独断的見解です。
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