2015年6月27日土曜日

文体はデザインだ!








映画が話題になっているのを
インターネットのニュースで見たのを
覚えています。

4月に行ったロサンジェルスのブックオフ
で家人が買った「八日目の蝉」。

まず私が読みました。

不倫、誘拐、堕胎、カルトなど
重いテーマを扱った力作です。
なかなか夢中になって読んでしまう箇所
もありました。

でも私は思い入れは出来ないまま
読み終えました。
感動もなく。



扱っているテーマもさることながら、
何と言うのか、この作家の文章にも
心惹かれないんですよね。

例えば川上弘美。

私は彼女の短編、長編をかなり読みましたが、
彼女の独特の文体が好きなのです。

家人曰く、ほんわかした書き方だけど、
川上弘美だって、
書いてる内容はドロドロだ、と。

それをあんなにオブラートに包んだみたいに
書いてもいいのか、と。

確かに中身はドロドロかも知れないけれど、
それをどう表現して読ますかが、プロの作家。

私は心地良く読めるのですが、
もちろん好みもあるでしょう。


⭐️⭐️⭐️


私は思うのですが、世の中で我々が着るもの、
使うもの、どれも誰かが<デザイン>したものです。

そして当然、デザインはそのものの個性となり、
それが使う人や着る人を惹きつけます。

車からバイク、自転車から包丁、お鍋、
洋服、おたまひとつ取っても、
そこにはまず、デザインありき。


アウトドアブランドも多々ありますが、
もちろん機能性は大切、
そして当然デザイン性も。


私はかつてアウトドアのものはダサい
と言うイメージを持ち続けていて、
アウドトアブランドの洋服は一切
買ったことがありませんでした。

ところがアラスカに行って、
ガイドをしたりで、必然的にアウトドア
のものを身につけることになり、
自分が「着れそうな」アウトドアブランド
としてあったのがパタゴニアだったのです。

もちろん全てがいいと言うわけ
ではありませんが、
それでもいまだにパタゴニアを着続けています。

ルルレモンしかり。
素材、デザイン、いいものが多いです。



翻って、本です。

文章です。作家です。


私が思うに、その作家の文体は、
洋服で言えばデザインではないかと。

かつて村上春樹が、自分にとって
一番大事なのは<文体>だと書いていた意味が、
今ならすごくわかります。

村上春樹がたどり着いた?あの独特の
<翻訳文みたいな文体>、
真似のしようがないですよね。

真似をしても、それは空虚な薄べったい
文体にしかなりません。

すごい読書量があるわけでもないのに、
こんなことを言う資格などない
かもしれませんが、私はきっと作家の
<文体>にまず惹かれるのだと思います。

中上健次の圧倒的な文体、文章、
程よく力の抜けた中島らもの文章、
「ここではないどこか」へ誘ってくれる
村上春樹の文体、
何とも言えないまったりとした気分
にさせてくれる川上弘美の文体‥‥。

文体とそれ以前に好きかも知れない寺山修司
と(えらそうに言えるほど読んでは
いないけど)太宰。

女性作家で読んだものって少ないのですが、
(角田光代、三浦しをん、
古くは山田詠美、吉本ばななとか?)
私にはこの人の文体、文章が好き、
という作家には、川上弘美以外でまだ
出会っていないのです。


<文体>はまさにその作家を形作る
<デザイン>ではないでしょうか。


これは偏執的一読者としての独断的見解です。



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