引っ越しの最中のフラッグスタッフで 気分転換にと読み始めて、 アルバカーキに引っ越してからも読み続けた グレース・ペイリー「最後の瞬間のすごく大きな変化」 を読了しました。
翻訳は村上春樹。
まあ何と言うのか決して読みやすい文章でも 内容でもないのですが、 この絶妙な面白さ、一体この作家の女性 ってどんなひとなのかしら、と 思って、最後の村上春樹の <あとがき>っぽい文章を読んでみて、 なるほど、さすがに作家であり、 当の翻訳者だけある彼女に対する評価と言うか、 分析はすばらしいです。
<ごつごつとしながらも流麗、 ぶっきらぼうだが親切、 戦闘的にして人情溢れ、 即物的にして耽美的、 庶民的にして高踏的、 わけはわからないけどよくわかる、 男なんてクソくらえだけど大好き、 というどこをとっても二律背反的>
まさにこの通り!なのです。
‥‥そのような物語の採集者としてのペイリー の視線はきわめて低く、鋭く知的であり、 また弱者に対する静かな共感性を 含んでいる。
1922年生まれのグレース・ペイリーは 乳がんで2007年8月に 84歳で亡くなっています。
亡くなる3ヶ月前の「ヴァーモント女性新聞」 でのインタヴューで自分の孫たち への夢として「ミリタリズムとレイシズムと 強欲がない世界であるように。 世界中の女性が自分たちの<場所> を獲得するために闘わなくてもいい世界 であるように」と話しています。
政治運動、社会運動に積極的に長く 関わってきた ペイリーらしい言葉です。
「人生のちょっとした煩い」も
読んでみたいですね。
春樹さんはこの本の最後に 彼女のあと2冊の短編集も訳出するつもり と書いておられるので 「人生のちょっとした煩い」は その1冊なのでしょう。
人種の入り乱れるニューヨークでのストーリー。
肌の色も様々な登場人物。
どちらかと言うなら底辺に近い女や男たち、 悪知恵がついた子供。
老人ホームに入った両親。
どの物語もすごく日常でリアルで、 時に猥雑で、 なのにどこか懐かしい、 温かさと優しさを感じるグレース・ペイリーの 「最後の瞬間のすごく大きな変化」でした。
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