2016年5月22日日曜日

村上春樹訳 グレース・ペイリー「最後の瞬間のすごく大きな変化」 








引っ越しの最中のフラッグスタッフで
気分転換にと読み始めて、
アルバカーキに引っ越してからも読み続けた
グレース・ペイリー「最後の瞬間のすごく大きな変化」
を読了しました。

翻訳は村上春樹。

まあ何と言うのか決して読みやすい文章でも
内容でもないのですが、
この絶妙な面白さ、一体この作家の女性
ってどんなひとなのかしら、と
思って、最後の村上春樹の
<あとがき>っぽい文章を読んでみて、
なるほど、さすがに作家であり、
当の翻訳者だけある彼女に対する評価と言うか、
分析はすばらしいです。



<ごつごつとしながらも流麗、
ぶっきらぼうだが親切、
戦闘的にして人情溢れ、
即物的にして耽美的、
庶民的にして高踏的、
わけはわからないけどよくわかる、
男なんてクソくらえだけど大好き、
というどこをとっても二律背反的>


まさにこの通り!なのです。


‥‥そのような物語の採集者としてのペイリー
の視線はきわめて低く、鋭く知的であり、
また弱者に対する静かな共感性を
含んでいる。


1922年生まれのグレース・ペイリーは
乳がんで2007年8月に
84歳で亡くなっています。

亡くなる3ヶ月前の「ヴァーモント女性新聞」
でのインタヴューで自分の孫たち
への夢として「ミリタリズムとレイシズムと
強欲がない世界であるように。
世界中の女性が自分たちの<場所>
を獲得するために闘わなくてもいい世界
であるように」と話しています。


政治運動、社会運動に積極的に長く
関わってきた
ペイリーらしい言葉です。

「人生のちょっとした煩い」も

読んでみたいですね。


春樹さんはこの本の最後に
彼女のあと2冊の短編集も訳出するつもり
と書いておられるので
「人生のちょっとした煩い」は
その1冊なのでしょう。



人種の入り乱れるニューヨークでのストーリー。

肌の色も様々な登場人物。

どちらかと言うなら底辺に近い女や男たち、
悪知恵がついた子供。

老人ホームに入った両親。

どの物語もすごく日常でリアルで、
時に猥雑で、
なのにどこか懐かしい、
温かさと優しさを感じるグレース・ペイリーの
「最後の瞬間のすごく大きな変化」でした。














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