2017年11月26日日曜日

Judy Bridgewater-Never Let Me Go/Lyrics Never Let Me Go (「私を離さないで」)読了















読むのが遅い私ですが、やっと
「私を離さないで」を読了しました。



15年くらい前に「日の名残り」
を読んで以来のカズオ・イシグロです。



いやぁ、英語でいうところの
overwhelmingでしょうか。


私には評論とか批評の文章力が全くない
ので、読後感の表現の仕方が
わかりませんが、
とにかく圧倒されました。


この内省的というか、
様々なことやシチュエーションを耐え忍ぶ
主人公キャシーのキャラクター。


こんなことを書けるのはやっぱり
カズオ・イシグロの内なる
「日本人性」なのではないか。


映画を観てみたいです。



 ✨✨✨



ところでこの小説のタイトルの
Never Let Me Go
ですが、
2番目の写真に写っている
村上春樹と小澤征爾の対談集の中に
こんなことが載っています。


(以下引用です)



英国人の作家カズオ・イシグロと最初に
東京で会ったとき、
二人だけで食事をした。
一時間ほど歓談したのだが、そのとき
僕らはほとんど音楽の話をしていたような
気がする。僕も音楽が好きな方だが、
イシグロも負けず劣らず好きで、
話は尽きなかった。
ジャズについて、クラシック音楽について、
もちろん小説の話もした。
彼はちょうど長編小説を書き上げて、
あとは出版を待つだけというところだった。
それで「とてもほっとしているんだよ」と言った。

‥‥‥‥


僕らはその作品の出版の成功を
祈って乾杯した。
でも彼はそのとき新しい小説の内容も
タイトルもまったく口にしなかったし、
僕もあえて尋ねなかった。


‥‥‥‥


それから日本人のジャズ・ミュージシャン
の話になって、
僕は「日本にジュンコ・オオニシ
とう素晴らしいピアニストがいるんだ」
と言った。
「‥‥。彼女は本物だよ」と。
イシグロは興味を持ったようだったので、
じゃああとで泊まっているホテルに
彼女の新しいCDを預けておこうと
僕は言った。
そして翌日それを実行した。


数ヶ月後にイシグロの新しい長編小説が
本国で発売されたとき、
そのタイトルを見て僕は小さく
息を呑んだ。
それは「Never Let Me Go(私を離さないで)」
というものだったからだ。
そして僕がイシグロにプレゼントした
大西順子のCDの中にも
「Never Let Me Go」
が含まれていた(とてもチャーミングな
音楽だ)。もちろん彼の小説の中では、
その音楽が大事な役割を果たすことになる。




✨✨✨



小説の中に出てくる歌「Never Let Me Go」
を歌う歌手は架空の存在ですが、
いかにも実在する歌手で
そんな歌を歌ってそうではないですか。



翻訳も素晴らしいです。


翻訳小説でですます体ってわりと珍しい
ような気がしますが、
この小説の場合は
主人公キャシーの邂逅にぴったりのような
気がします。



(ここからはネタバレですが、日本でも
ドラマになっているくらいなので、お許しを)


想像するだけでもぞっとする
「臓器移植」
というテーマを扱っていながら、
こんな精緻な表現で綴るラブストーリー。



ポール・オースターとは違う
意味で、読むのをやめられない小説でした。




































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