2017年2月27日月曜日

カーソン・マッカラーズ「結婚式のメンバー」読了









カーソン・マッカラーズの
「結婚式のメンバー」村上春樹訳、
やっと読み終えました。


村上春樹は大学の時に知ったという
この作家。

私は、モンキーで読むまで
全く知りませんでした‥‥。


そして、村上春樹が紹介して、
彼の訳でなければおそらく
読もうとはしなかったであろう作品だった
と思わざるを得ません‥‥。








主人公は(思春期真っただ中の)12歳の少女。

主な登場人物は彼女をとりまく、
黒人の料理人といとこの少年。


ジョージア州コロンバスに、
1917年に生まれたという
カーソン・マッカラーズ。

1917年といえば大正6年で、
生きていれば100歳。


そして1917年といえばロシア革命、
第1次世界大戦の真っ最中で、
アメリカが参戦した年です。


この物語、かなり自伝的要素のあるもの
らしいですが、
単純計算して、
マッカラーズが12歳の時って、
1929年、昭和4年です。


物語の中で、主人公の少女が、
兄の結婚式で、
父親らと遠くの町まで行くくだりがある
のですが、
中産階級だと思しき彼女の父親も
車を持っていなくて、
長距離バスでその町まで行くのですが、
調べてみたら、この時代、
自動車の生産数など知れたものだったようで、
なるほどと納得。


まあそんなことは置いておいて(笑)、
とにかく最終の大きな展開まで、
主人公と料理人の黒人女性の会話
と主人公の思春期らしい込み入った行動
の描写が延々と続くのです。


そしてこの当時の南部の小さな町の、
町であるにもかかわらず、
その細い自然描写がすばらしいのです。


村上春樹は読後感が似ている
と、樋口一葉の「たけくらべ」を
挙げていますが、
私は彼女のこの濃密な自然描写に、
中上健次を思い出しました。


空ひとつ、空気の色や感じ、
木々の輝き、
部屋の中の変わりゆく空気感の描写。

それがみごとなのです。


1929年当時、アメリカの小さな南部
の町に住む女の子が、
町を出て、都会にあこがれるという
こともそんなになかったのではないか
と勝手に想像していますが、
マッカラーズは実行したんですよね。


それにしてもこの物語の中で
重要な位置に描かれる、
黒人の料理人ですが、
彼女が主人公に発する言葉がまたいいのです。

この当時の、南部での黒人の
使用人に対する扱いってどんなだったか
全くわかりませんが、
少なくてもこの物語の中では
一人の人として、
それも重要な指針役として描かれています。



✨ ✨ ✨


村上春樹さん、
ありがとうございます!


あなたが訳してくれなかったら、
おそらく永遠に知ることも
読むこともなかった作家でした。


マッカラーズの他の作品もぜひ
訳してくださいね!
















2017年2月26日日曜日

こんなハプニング、あってはならないこと、今夜のアカデミー賞







今夜のアカデミー賞には参りました。


こんなハプニング、こんなミスって
あり得る、起こり得るのでしょうか。


それはさておき、助演男優賞はMoonlight の
マハーシャラ・アリ。

彼、涙ぐんでいましたね。








そして助演女優賞は Fences の
ヴァイオラ・デイヴィス。

映画ではちょっと疲れた、毒舌家
のだんなを持つ妻役をしっとり
と演じていましたが、
実際はこんなにきれいな女性です。









外国語映画賞には
イランのファルハーディー監督の
「セールスマン」が受賞しましたが、
監督は最初の大統領令でアメリカに
入国できなくなり、その後抗議のため
出席を拒否しました。

代理人の女性が彼のメッセージを
読み上げました。

以下は<シネマトゥデイ>から
引用させていただきました。




トランプ大統領が誕生した後のアメリカ国内を象徴するかのように、国の分断や多様性といった言葉が飛び交った今年のアカデミー賞で、特にその行方が注目されていた外国語映画賞は、アスガー監督と主演女優のタラネ・アリシュスティが授賞式をボイコットした『セールスマン』に贈られた。アスガー監督の代理人を務めたイラン出身の実業家アニューシャ・アンサリ氏が壇上で監督にかわって声明文を読み上げ、「出席できなくて申し訳ありません。非人道的な法律によって差別され、アメリカへの入国を許可されなかった私の国のほか6か国の人たちを代表し、私は欠席しています」と切り出すと会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
 監督は「世界を『自分たち』と『敵』というカテゴリーに分断することは、理不尽な侵略や戦争のための偽りの正当化という恐怖を生みます」と続け、「それらの戦争は侵略の犠牲となる国に住む人々の民主主義を妨げ、人権を奪います」とつづる。そして「映画をつくる人たちは人間の価値にカメラを向け、様々な国や宗教の固定概念を超えることができます。『自分たち』と『他の人』の間に『思いやり』を生み出すことができます。『思いやり』は今日、これまでのどんな時よりも必要とされています」とメッセージを送った。


 外国語映画賞に関しては、同部門の候補作の監督たちが授賞式に先駆けて「日曜日の授賞式で外国語映画賞が決まるが、私たちは『国境で分ける』考え方を拒絶する」と共同声明を出し、「最高の国、最高の性別、最高の宗教、最高の人種などないと信じている。この賞が『世界中の国が一つであること』『芸術は自由であること』のシンボルとなることを願っている」と訴えていた。








脚色賞を取って、壇上でスピーチをする
バリー・ジェンキンズ監督(左)と
タレル・アルヴィン・マクレイニー。







タレル・アルヴィン・マクレイニーが書いた
 公表されなかった芝居を、
バリー・ジェンキンズと彼が
シナリオにしたのが
Moonlight です。


後になって、監督のジェンキンズは
自分とマクレイニーが、
マイアミのリバティシティという同じ町
で育ったことを知り、
撮影もその町のリバティスクウェアという、
(低所得者用)住宅で行われました。

主人公の母親役を演じたナオミ・ハリスは
たった3日間での撮影だったと話していました。











彼の評判が高かったのは読んでいましたが、
主演男優賞、
La La Land のライアン・ゴスリングに
あげて欲しかった!

だって歌って踊って、ピアノまで
弾いてのすばらしい演技でしたから。


かつては1つの作品が賞を総なめ
ということはけっこうあったように記憶
していますが、
今の時代は、そういうふうに賞を集中
させないという
力が働いたのでしょうか。










主演女優賞はエマ・ストーン。

これはおそらく誰も異議がないでしょう。


そう言えば彼女、
作品賞が La La Land だと発表されて
再びステージに上がって、
作品賞が間違いだったとわかった時、
ただただ Oh, My God をつぶやき続けていました。








私も作品賞が La La Land と発表されて、
あぁ、良かったと思わず立ち上がって、
テレビの前から離れたんです。


作品賞のプレゼンターは、
「俺たちに明日はない」コンビ、
ウォーレン・ビーティーとフェイ・ダナウェイ。


作品賞の発表の際、赤い封筒を開けて
中のカードを見たウォーレン・ビーティー
の様子がちょっとヘンだったのですよね。

どうしたのかしら?と思って
見ていたら、
あなたが言ってというように、
カードをフェイ・ダナウェイ渡したのです。

それで彼女は即座に
La La Land と読み上げました。


La La Land にかかわった人たちが
ステージに上がり、
スピーチも二人が終えたところでの
ハプニング。


こんなことあっちゃあいけないですよねぇ。

何かどうなってこんな事態を
招いたのか。

アカデミー協会は検証すべきでしょう。



✨✨✨



Moonlight の紹介で、
プレゼンターがこれは
「ユニヴァーサルストーリー」
だと言っていたのが私には印象的でした。


黒人であること(人種的マイノリティ)、
貧困、ドラッグ、いじめ、性的マイノリティ、と
ある意味、すごく限定された場所での、
限定された人々の物語ではあるのですが、
そこから俯瞰していけば、
それはこの世界のあちこちで見られる、
今、起こっている風景でもあります。



Fences 、Hidden Figures 、そして
Moonlight と今年は、
アクションやマッチョではなく、
心にしみる黒人映画に感動させられました。



さてさて、アートの世界では
様々な批判的コメントやスピーチを経て、
このアメリカ自体は一体
どう進んで行くのでしょうか。


そう言えば、ツイッター大好き
我らがおバカ大統領、
今回のアカデミー賞に対してはいまだ
何の反応も聞こえてきませんね(笑)。

















2017年2月25日土曜日

アメリカ映画と人間の感情







明日はアカデミー賞。

昨日は、この映画を観に行きました。


それが何なんだと言われればそうなのですが、
外国語映画賞も含め、
今年はアカデミー賞候補の映画を
けっこう観ました。


フラッグスタッフの映画館は古くて、
スクリーンも音響効果も悪い映画館で、
しかも外国映画やインディーの映画
など程遠いラインナップだったので、
映画自体からずいぶん遠ざかっていました。



アルバカーキには映画館も多く、
独立系の映画ばかり上映する映画館
や名画館もあり、
昨年末から映画館に足を運ぶ回数
が増えています。


昨日観たのはロサンジェルスにいた時に
観た、You Can Count On Me
の監督作品です。


これがなかなか良くて、
マーク・ラファロという俳優の名前も
初めて知りました。


今回の映画の主演は、
ベン・アフレックの弟、
ケイシー・アフレックです。

自分のミスで家が火事になり、
子供をなくし、奥さんとも別れた主人公は、
その町を出て、
半地下の一間のアパートに住んで、
ハンディマンの仕事をしています。


そんな彼の実兄が突然亡くなり、
元住んでいた町に戻り、
そこから兄の息子である甥っ子との
物語が始まります。


父親を突然失くしたティーンエイジャー
の息子の表に出せない、
複雑な感情はうまく描かれていた
と思いますが、
全てを失くして殻に閉じこもり、
バーでビールを飲んではケンカを
始めるという主人公には
気持ちはわかるものの、私には
感情移入は出来ません。



✨ ✨ ✨



何年か前に Wild という映画がありました。


母をガンでなくした主人公が、
パシフィッククレストトレールに
挑戦するという実話を元にした映画でしたが、
その中で主人公は、
母親が亡くなったショックで自暴自棄
になり、ドラッグにおぼれるようになります。


それがある時本屋さん(だったか、
小さなマーケットだったか)で見つけた
パシフィククレストトレールの本を読み、
自分も挑戦しようと決めます。


お話は違いますが、
昨年のアメリカ大統領選挙で、
確かNHKが、
トランプ支持者の町を行く
というようなタイトルで、
元工業地帯の町の工場で働いていた弟が
失職して、自暴自棄になり、
ドラッグ中毒になって自殺したという
女性を取材していました。

彼女は弟のために、
こんな町のために何かしてくれそうな
トランプを支持するのだと
強く話していました。


アメリカ人ってそう言っちゃ何ですが、
感情がシンプル、子供っぽいと言うか、
精神的に大人になりきれていない人が多い
ように感じます。

それがいい具合に表出する場合もある
のですが、
やはり感情に奥行きや深みがないと
思えてしかたがありません。


悲しいことがあったり、腹を立てれば、
人をなぐるか
ものを壊す。

アルコールやドラッグに走る。

簡単に自暴自棄になるんですよね。

映画を観ていたらそれは顕著です。


もちろん、
In To The Wild (荒野へ)のクリスのような、
ジャック・ロンドンが好きで、
非常に内省的なアメリカ人も
いるのでしょうが。


でもまあ一般的なアメリカ映画で描かれる
人々の姿がごく普通のアメリカ人のはずです。



✨ ✨ ✨



自分が感情移入出来てじんと来る映画と
映画自体の優劣の評価は
もちろん違いますが、
黒澤明の「赤ひげ」や「生きる」、
チャン・イーモウの初期の作品、
ギリシアのテオ・アンゲロプロス作品は
他にも観たい映画が
たくさんありますが、
私が観たのは「永遠と一日」だけ。



イランのアッバス・キアロスタミ監督の映画は
「黄桃の味」「そして人生は続く」
「オリーヴの林をぬけて」しか観ていませんが、
何度でも観たい映画ですし、
他の作品もぜひ観てみたい。


日常生活を淡々と描く。

悲劇的なことも時にコミカルに。

人生って結局同じことの繰り返し。

あふれる感情をぐっとこらえて、
時を過ごして行く。


例えば恋愛を描いていても、
切ないんですよね、
「初恋のきた道」のチャン・ツィイーの
健気さ。

好きな人にもらったくしを落として
必死でさがす時のあの
切なさ。


イラン映画「バラン(雨)<日本語タイトル
は少女の髪留め>」も
ロサンジェルスで観ましたが、
仕事場で働くアフガン難民の男の子が、
ある日、同じ現場で働く少年が、
女の子だったことを知ります。

これも切なかったなあ。



とまあね、そんな映画が
私は観たい。








































2017年2月24日金曜日

月のカレンダー2017








もう何年続いて、このカレンダーを
千恵さんからのお土産で
いただいているでしょうか。


今回は何と、昨日、ほぼ2か月近い
日本滞在から帰られて、
1泊した今日の、トレイダージョウでの
ショッピング中に出会いました。


私もトレイダージョウへ行く、
だいたいの時間をお知らせして
いたのですが、
それでもピンポイントで遭遇できるとは
限りません。


そこでいただきました。

貴重な日本からのお土産です。







いつものシンプルでかわいい絵。


ここのところまたまた寒くて、
冷たい風が吹きすさぶアルバカーキ
ですが、この和紙の手触りと
黄色いお月さまの絵を見ると、
心がふわっと暖かかくなります。


明後日の日曜日は新月ですね。


そして2月もあと4日。


千恵さん、ありがとうございました!

長いこと待ちました、今日やっと届いたイヤリング








大のお気に入りだったイヤリング。

何年か前に日本で片方落として、
それっきり。


それがひょんなことで、作者が
アルバカーキに住んでいるとわかり、
それで残った片方を渡して、
同じものをオーダーしていました。


このイヤリング、けっこう重さもあるのですが、
忘れもしない、2011年の、
東北の震災のあと日本に帰り、
福島原発の事故を受けて、
鎌仲ひとみさんの
「六ヶ所村ラプソディー」が再上映される
と知り、観に行った時です。

上映時間に間に合うようにと、
繁華街を走り抜けたんですよね。

このイヤリング、最初から
ピアスのポストが細めで、
クラッチが少し緩かったのですが、
クラッチをサポートするゴムの留め具
もつけていなくて、
走っている間に片方落としていたことに気が
ついたのは映画館に着いてからでした。


そんな気に入りのイヤリングだったので、
両方そろって、
もう1度身につけることが出来ると
喜んでいたのですが、
何ヶ月たっても音沙汰なし。


片方分の代金は払っていたので、
とにかく何か事情が変わったのなら、
全額返してもらうしかないと
手紙まで送り、
毎日毎日メールボックスを開けては
今日こそ届いていないか、
中をのぞいては落胆していました。



今日、メールボックスを見たら、
茶色の封筒。


中身は完成したイヤリングでした。


ターコイズはローンマウンテン。

新しい方が少し色が濃くて
形もちょっとぼってりですが、
とにかく同じ石があって良かったです。


腕はいいのになあ、
こんなに長く待たされて、
かなり心配しました。



2017年2月21日火曜日

久しぶりにアルモドヴァル監督の映画です










私は2日続きですが、今日は仕事
がオフの家人を誘って、再び
字幕付き映画を観に行きました。


スペインのペドロ・アルモドヴァル監督
の「julieta」です。



観たのは一番右端の映画。

上映館も Moonlight と同じシアターです。

昼間、Julieta を2回上映し、
夜に Moonlight を1回
というスケジュールです。


手に入れた短編集を読んだことのあった、
アリス・マンローは、数年前に
ノーベル賞を受賞しましたが、
この映画は、彼女の短編集「Runaway」
の中の3作品をベースにした物語です。


短編集の7作のうち、脚色した3作が
ジュリエットという女性を主人公にした
物語で、それで映画のタイトルが
スペイン語で「 julieta 」
となったのでしょう。


英語で Juliet ジュリエットですが、
スペイン語になると当然スペルも変わり、
発音もフリエッタです。

英語のJの発音がスペイン語では
は行の発音に変わるからでしょう。




先日観たイラン映画の「セールスマン」
よりは字幕が短くて、少なくて、
こちらはかなり読めました(笑)。


All About My Mother

Talk To Her

以来のアルモドヴァル作品です。



まずとにかく映像がきれい。


壁の色、ヒロインの女性たちの着る洋服、
車の色、色彩がそれはそれは美しいのです。



主人公の女性には、ある日突然、
彼女の前から姿を消した娘がいます。

その娘へのメモを書き始めるところから
彼女の回想が始まります。

後半になり、娘がなぜ失踪したのか、
そして最後に娘がなぜ
自分の住所を記した手紙を
母親に送ったのか。

なぞが解けていき、
娘の身に起こった皮肉な出来事が、
結局最後に彼女と母親を再び結びつける
きっかけとなる、あるいはなりそうと
思わせるラストシーン。


「女性性」とか「母性」
を描かせたら、とびきり上手な
男性監督ですね、アルモドヴァルは。


それにしてもここだけの話、
映画はやっぱり、

誰かと観るより
一人で観たい(笑)。


私は昔から、若い時からそうでした。

映画は一人で観る。


暗い館内で一人、シートにうずくまって
スクリーンとにらめっこ。


一人で映画の世界に浸りきれる時間が
何よりも好きでした。


10代の頃から、けっこう映画
を観て来ましたが、
誰かと観に行った映画って、
タイトルを覚えているくらい少ないです(笑)。
















2017年2月20日月曜日

Moonlight を観る








アルバカーキに引っ越してもう
10ヶ月ですが、
ふだんのグローサリーの買い物と
アップタウンのモール以外、
ほとんど町を知らないのが現状です。


先だってはノブヒルという学生街
の映画館へ行きました。


今日はこれまた来たことのないエリア
にある映画館へ、出かけました。

映画のスタートは夜の7時前。

1日に1回の上映時間が夜だけなのです。

こんな時間に出かけるのも
初めてです。







この映画館、インディペンデント系の映画
や外国映画専門の映画館のようです。








観たかったのは、Moonlight 。







小さい館内ですが、
スクリーンが高めで、
後ろの席でも十分見やすいです。


昨年から今年にかけて、
まるで、昨年のアカデミー賞での
批判を覆すかのように、
いわゆる<黒人映画>がたくさん
作られて、上映されていました。


私たちも、Fences にHidden Figures と
立て続けに2本観ましたが、
私はこの Moonlight もどうしても観て
みたかったのです。

エギュゼクティヴプロデューサーに
ブラッド・ピットの名前。


監督はこれが長編2作目だという、
バリー・ジェンキンズという、
マイアミ生まれの黒人監督です。


映画の内容などはインターネットでも
たくさん出ているので、
私が敢えて書くことはしませんが、
この映画が今の時代、
決して黒人がほとんどである、マイアミ
の小さな町で起こったことではなくて、
日本を含む世界中で、
起こりうる話であるということを実感
させられます。


貧困、育児放棄、麻薬、
そしてホモセクシュアルであること。

どれを取っても、昨今、
日本の新聞でも繰り返し目にすることがらです。


ストーリーを提供した
タレル・アルヴィン・マクレイニーと
監督のバリー・ジェンキンズは
マイアミの同じ町で育ったことが
あとになってわかったのだそうです。


そして映画ムーンライトは、このマクレイニーの
In Moonlight Black Boys Look Blue
という舞台のシナリオから
脚色されたものなのです。


この芝居のタイトルは、
映画の中で子ども時代の主人公を
何かと助ける麻薬の売人である
ホワンが話す台詞の中に出てきます。


自分も子どものころにはチビで、
月夜の夜にも靴も履かずに走り回っていた。

そんなある時、一人の老婆が自分を引きとめて
こう言ったんだ。

走り回って、(月の)光をいっぱい
浴びたらいいよ。
月光の下では、黒人の子は青く見えるんだ、と。



ストーリーはこのマクレイニー自身の
体験から書かれたもののようですが、
そんな環境で育った彼も、
最終的にはイェール大学演劇大学院を卒業
しているという優秀さ。

そんな彼の生きざまを思うと、
才能と強靭な意志と努力の人だったのだろうと
想像するに難くはないでしょう。


4日後に迫ったオスカーを取っても
取らなくても、
今年観ておいて良かったと思う映画で
あることは間違いありません。



✨ ✨ ✨


ところでこの映画で、
主人公の母親役を演じているのが
007 Skyfall でボンドガールにも抜擢された
イギリスの女優ナオミ・ハリスです。


彼女があるインタヴューで、
この母親役は本来なら、
自分が絶対やらない役だったと話しています。

確かに女優も演じる役によるイメージ
というのが嫌が応にもついてしまいますものね。


ところが彼女はこの役で
アカデミー賞にノミネートされました。


ジャンキー役でもきれいなことには
間違いなくて(笑)、
ほどよく鍛えられた腕と上半身がまた
かっこいいのです。



この映画に出てくるもう一人の
黒人女優、主人公の子ども時代に
彼にやさしく接する麻薬ディーラーの
奥さん(?)役の、
Janelle Monae は、Hidden Figures にも
出演している歌手でもあります。
彼女もとてもキュートなんです。



もうひとつの話題は、
この映画のエギュゼクティヴプロデューサー
であるブラッド・ピット。


プライヴェートではたいへんでしたが、
いい映画を制作していますよね。